#005 - GIOCATORE(シルエット編)
お洋服の中でも、ジーンズは最も市民権を得ているアイテムと言えます。ほとんどのファッションブランドで展開のあるアイテムですし、そのブランドの中でも更にいくつかの種類があって、いったいどう選べば良いのか分からない・・・というのは本当によく耳にする話です。そんな時に僕が店頭でお客様にご案内するのは、「頭の中に3つの箱を思い浮かべてください」というお話。それぞれの箱に「色」「サイズ」「シルエット」という3つの条件のラベルを貼り付けて、ひとつひとつ整理していくと、理想の1本に出会うことができるはずです。

まずひとつめの箱に入れる「色」という条件。これを決める要素として、季節・持っている服との相性・そして何より好みという決定打があると思います。ただデニムというアイテムの特性上、特に男性はご自身で「育てたい」という方が多く、ワンウォッシュ等の濃いめを選ばれる方が多い傾向にあります。反対に、気温が上がればウォッシュのかかった淡いインディゴを手に取る方が増えるのもまた事実です。

ふたつめの「サイズ」という箱に関しては、シンプルにウエストのサイズ表記がそれに当たり、ブランドとしては少しタイトめでチョイスしていただくことをお薦めしております。何故ならば、デニム生地は水を通して一度縮んだ後、使用するにつれて徐々に徐々に緩んでいきます。目安としては、大体1インチくらい緩んでくるので、ウエストのトップボタンが無理なく閉じられればそれがジャストサイズ、と言えます。

そして最後の箱、「シルエット」。これが一番厄介なもので、体型や着用シーン、コーディネート等、最も多くの考慮すべき要素が多いものです。細身が好きで細身しか履かない!という方も、いざ緩めを履いてみると「新鮮!」となることも多いですし、何よりKUROが最も力を入れている要素こそ、この足を通してみたときの「シルエット」であります。そしてこの「シルエット」という切り口で、最も語るべき点が多いKUROのジーンズの型が、「GIOCATORE(ジョカトーレ)」です。





GIOCATOREが登場したのが確か2016年頃だったかと思いますが、それまでKUROのラインナップには、シルエット名に色の「黒」を彷彿とさせる単語をチョイスしていました。例えばGRAPHITE=黒鉛であったり、FIXER=暗躍する人であったり。それがいきなりイタリア語のGIOCATORE、意味は「選手・アスリート」ときたら、頭の中に「?」が3つくらい浮かんだのを覚えています。

その疑問も足を通してみて納得。腰回りや太もも周りは、ガッチリとしたアスリート体型の方でも安心して履けるホールド感がありつつも、裾にかけて綺麗なテーパードがかかっていることで決してダボつくことはなく綺麗なラインが出ます。一般的に、テーパード(裾にかけて細く絞っていく形)というと、体の左右で絞るイメージが多いですが、このGIOCATOREが特別たる所以は、前半身と後半身で見え方が変わるテーパードをかけているところ。前半身で使用している布の量と後半身で使用している布の量を変え、後半身は少しゆとりをもたせているところがユニークです。

実はこの「前後でカッティングを変える手法」というのは、男性の制服とも言える「スラックス」によく使用される製造方法です。この手法をデニム素材である「ジーンズ」に応用したことで、そのシルエットの美しさを際立せることに成功させています。





ここでひとつ湧いてくる疑問が、「アスリート体型みたいにガッチリした人でないと似合わないのか?」ということ。何を隠そう僕自身も最小サイズ28インチよりも2サイズ小さい、アスリートの「ア」の字もかすらない体型の持ち主です。しかしこのGIOCATOREの真のポテンシャルは、履く人の体型を選ばずカバー出来る、ということにあります。細身の人がこのパンツに足を通すと、デニムというカジュアルアイテムの要素が顔を出し、ぬけ感のある履き方が出来ます。きっとこれが光沢のある上品なウール素材のスラックスでは、「外し過ぎ」となってしまうところが、デニムだとお洒落の範疇にしっかり入る。ファッションの奥深さを感じさせてくれる、緻密な計算に基づいた一本です。

今回はGIOCATOREの「シルエット」にフォーカスしてお話しましたが、生地であったり、片耳仕様のセルヴィッジであったり、細部でまだまだ語りつくせないことはたくさんございます。なんとなく次のジーンズをお探しの方、ぜひ店頭でスタッフの話を根掘り葉堀り聞いてみてください。きっと納得出来る1本が見つかると思います。
9月 01, 2020 — Adminkurodenim-japan
Tags : KURO